声の印象を決める体の中にある共鳴腔には頭や胸などたくさんありますが、主なものでは、咽頭腔(声帯の上)、口腔、鼻腔という3つがあり、それぞれ特徴を持っていて、発声した時に体内で共鳴した時に倍音が生まれるというしくみです。
倍音とは
倍音とは、音の高さとされる基音に2つ以上の整数倍周波数の音が合わさった音です。例えば、100Hzの音があったとしたら、倍の200Hzの音が倍音になります。
音の高さを表す基音以外の音が合わさって、その人その人の声に個性が生まれています。合唱などでも同じドの音を発声していても誰の声か分かるのは、人それぞれの持つ倍音によるものだということです。だから、声紋分析は裁判証拠も可能なんですね。
「倍音」をしっかり鳴らすと、魅力のある歌声と響きをもつ声になる!
歌声に関しては、倍音が多い声のほうが明るい印象となって遠くまで響き、少ない声ではぼやっとこもった声となって響きにくいと言われています。
倍音が多いとされる歌手では、美空ひばりさん、宮本浩次さん(エレファントカシマシ)、宇多田ヒカルさんなどがあげられ、3人ともそれぞれとても魅力のある歌声と響きをお持ちです。
倍音をコントロールし、声をコントロールする
人間の共鳴腔の中で、発声時に最初に働くのが声帯の上にある咽頭腔、次に響きやすくコントロールしやすい口腔の2つは、中音から高音の響きを強化するところで、鏡を見ながら空間を意識的に作る練習ができる場所です。
軽いあくびをした時に感じる喉の開きがそれなのですが、具体的には舌をリラックスさせて下部に置き、病院で喉を診てもらう時にお医者さんがヘラで押す舌の奥部分を自ら下げ、口蓋垂が上に引っ張り上げられるように意識すると、喉奥の壁まで見えます。これで大きな空間ができあがります。
大事なのは舌の位置で、舌がリラックスしていないと奥が開かれません。鏡を見て喉奥の状態を確認しながらやってみましょう。鼻腔は高めの音を共鳴させることができる場所です。共鳴の練習ではハミングをしてみることで、まず鼻腔での響きを意識することから始めます。
コツをつかむ練習法
鼻から息を出してその空気によって鼻腔を震わせる方法と、鼻からの排気を意図的に遮断することで鼻腔共鳴を引き起こす方法とがあります。
鼻から出る空気を止めるには、「んが、んが」という発声練習が効果的です。
胸は低めの音を強く共鳴させることができる場所で、バスパートの男性がよく使うところです。これらの共鳴腔での響きをバランスよく使えることが、美しい歌声として聴かせるポイントです。どこかの共鳴腔だけが突出して強いと、声が硬く聴こえたり、詰まって聴こえたりしてしまいます。それぞれの共鳴腔に十分に響かせられるようになったら、声のバランスをさまざま試して自分に合った共鳴声を見つけていきましょう。
スペクトラルグラムで視覚的に
歌声をより響かせるには、自分の体を楽器として客観的に見ることです。
楽器でも歌声でもスペクトラルグラムという機械を使うと、その音の持つエネルギーの周波数のバラつきが可視化できます。裏声で高音を出してみると基音だけが高く現れ、地声で中音を出した時には基音以外のさらに周波数の高いいくつかの音が同時に計測されるのが目で見て分かります。
楽器では、特にシンバルの音は基音と同じくらいの大きさでその他多くの音が同時になっていることが分かり、ピアノでは基音のエネルギーが一番高いことが分かります。
なんとなく喉の奥を広げて空間を作る練習を続けるだけでなく、iAnalyzer Liteなどのアプリを使って自分の声を計測し、どこの周波数にエネルギーポイントが置かれているのかということを可視化して、自分の声の持つ倍音を確認することもできるということを知っておきましょう。
楽器に比べて人間の声は多彩な周波数を同時に持っているため、人それぞれの個性となるということが物理的にも示されているのです。
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