リップロールは、唇を合わせた状態で息を吐いて、唇をブルブルと振動させるものです。
子どもの時になんとなく遊びでやったことのある人も多いのではないかと思います。
そんな人は、え?あれに名前があるの?と意外な気がするかもしれませんが、実はこの唇振動はリップロールと呼ばれ、ボイストレーニングの一つに取り入れられているのです。
では、リップロールはどのように行い、どんな効果があるのでしょうか。
リップロールの効果
リップロールは、ボイストレーニングにおいて正しい発声を身に着ける効率的な練習方法とされており、本格的なボイストレーニングを始める前の、ウオーミングアップにも適しているものです。リップロールの効果は大きく3つに分けられます。
音程が正しく取れるようになる
音程とは何かというと、「二つの音の高さの隔たり」のことです。つまり、「ドレミファソラシド」の中で、最初のド同士は同じ高さの音ですが、隣り合ったドとレは違う高さです。同様に、ドとミも違う高さの音です。
この、音同士の高さの「差」を、音程と言います。
この音程がうまく取れないと、歌は上手に歌えません。音程は声帯が締まったり開いたりする極細かな動きで作られており、唇の形は必要とされないものです。
リップロールで唇を振動させていると、唇は開いたり締まったりしませんから、声帯だけを使って音程を上下させることになります。
唇振動をキープしながら音程を変える行為は、声を出しながら行うよりも神経を使いますので、結果的に音程のコントロール力向上につながります。
自然な裏声が出せるようになる
裏声(ファルセット)というのは、地声よりも息漏れの多い繊細な声で、高音域を歌う時によく用いられます。
裏声は、喉が開いていないときれいに出せず、「声が裏返る」ような感じになってしまいます。
きれいな裏声を出せるようになる練習には、地声と裏声を何度も交互に出してみて声帯の開き具合を確認する方法がありますが、リップロールをしながらだと声のボリュームや発音に左右されずに行うことができます。
リップロールをしながら地声と裏声のチェンジを繰り返すことで、声帯の開け閉めがスムーズに行えるようになってきます。
低音と高音で息がぶれにくくなる
リップロールは、唇から一定の空気圧を出すことができないと、長く続けられません。
強い息を出してしまうと、唇がブルブルと振動せずに、吹き出したようになってそこで止まってしまうのです。
もしくは、音が出ずに空気音だけの振動になってしまったりします。
リップロールを長く継続させるには、細く長い息を吐きながら行う必要がありますから、その状態を保ちつつ高い音を出したり低い音を出したり、という練習をすることによって、音程によって息がぶれにくくなるという効果が期待できるのです。
リップロールの行い方
まずは、かるく唇を閉じます。ぎゅっと力を入れてはいけません。
唇を閉じた状態で息を吹くと、振動します。
上手くできない場合は、両方の頬(えくぼが出るあたり)に人さし指を置いてかるく押さえてみましょう。
少し外側に引っ張ってみたり、内側に寄せてみたりすると、振動する場合もあります。
もしくは、下がった頬の筋肉を上げるようなつもりで、頬骨の下を押さえてみても良いでしょう。
最初は長く振動させられることを目標に。息の量を一定に保ち、細く吐くようにします。
強い息では長く続けることができません。
リップロールが長く続けられるようになったら、振動させた状態で声を出していきます。地声、裏声、低音、高音、様々な音程を出してみましょう。
上手くできるようになったら、ドレミファソラシドの音階を上げながら限界まで音を合わせてみたり、リップロールで好きな歌を歌ってみても良いでしょう。
声帯の開け閉めのみで歌わなくてはならないので難しく、それだけに音程を取る効果的な訓練になります。
口を閉じた状態のリップロールに慣れたら、今度は口を少し開いて(「オ」の口)リップロールをしてみましょう。
「オ」のリップロールをすると自然と喉が開いた状態になりますので、発声の練習に効果的です。
リップロールのコツ
リップロールをスムーズに行うには、表情筋をリラックスさせることが重要です。
日本語は、鼻より下の筋肉だけで発音できると言われており、鼻から上の顔面の筋肉が固まってしまっている人が多いのだそう。
表情筋が硬いと、いわゆる「表情が硬い」状態になってしまい、豊かな表現力が身に付きません。
リップロールに関してだけでなく、ボイストレーニングには顔の筋肉をリラックスさせることがとても大切ですので、始める前に顔面運動をしてみましょう。
また、リップロールを長く維持するためには、腹式呼吸で横隔膜を使い、空気量を調節する必要があります。
横隔膜を鍛えるために効果的なのが、「s」の音で細く長く口から空気を出す練習をすることです。
これを繰り返すと、細く長い息でリップロールをスムーズに行うことができるようになります。
最後に
リップロールは遊び感覚で声帯を鍛えることができる、効果的で喉への負担も少ない練習法です。
ボイストレーニングの効率的なウオーミングアップとしてプロも用いている方法ですので、暇を見つけて行っていきましょう。
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